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キミ、なっちゅをもらえるかね

2024

0427
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2012

0817

再起動中なのや。

夏のあれこれも無事落とすことなく通過し、あたくしのわがままボディは実りの秋に向けて養分をためる作業に入りました。

毎日、仕事上がりに回るお寿司を食べているのです。

今週の水曜日に入ったローリングすしショップ。そこで今週のあたくしの命運が決定いたしました。その日は自分をねぎらうためにすしを食うと決めていたのです。そういうわけで、あたくしは終業と共にカンパニーをほとばしり出、およそ時速46キロメートルの速度で中野方面に向かったのです。

再開発地域のアスファルトは美しくなめらかで、あたくしは氷の上を滑るように進んでゆきます。夕焼けができたばかりの街を、公園を、人を、赤く染め上げる中、あたくしだけが原色の強まみをマグマのように煮えたぎらせていました。すしがくいたい。自分をほめたい。もし邪魔するやつがあれば、逡巡することなく即座に踏みつぶちころしたことでしょう。

そのような状態で、あたくしはローリングすしショップの近くに到着しました。凄まじい速度で駐輪場に駐車し、RSS(ROLLING SUSHI SHOP)に向かいます。あたくしには決まったお店があり、いつもなら一切の迷いなく入店するのですが、その日はなぜか「たまには違うお店に入ってみようか」という気もちが芽生えたのです。

中野サンモール商店街は意外にもRSS激戦区です。
選択肢はいくつかあります。

あたくしはかつて大胆不敵にも「魚がし日本一」の看板を掲げていたRSSをチョイスいたしました。日本一の自動ドアが日本一スライドしてオープンし、日本一の店内にあたくしを招き入れます。

しかし、百戦錬磨のSUSHI戦士であるあたくしは、日本一のシートに座った瞬間、あたくしは悟ったのです。

こんなものがすしで(検閲)



……荒涼とした大地、倒壊したビル、ボロ布をまとって行くあてどなくさまよう人々。空は真っ黒な絶望に覆われて空が見えぬ。一切日の差さぬ大地には作物も育たず、わずかに生き残った人々は汚染された草木や汚水をすすって生を繋いでいた。

「川を、何かが、流れてくる」

少年が指さしたその先には、何かを乗せた板のようなものが漂っていた。その縁取りはかつてその板の上のものが食料であることを示していた。それは皿と呼ばれるものに間違いなかった。

何百年も昔、この国は座っていれば新鮮な魚を乗せた白米のかたまりが無限に流れてくる豊かなところだった。それ以外にも、ありとあらゆる滋養が、皿と呼ばれるものに乗せられて、いくらでも運ばれてきたという。

川の流れが私たちのもとに皿を運んできた。
わたしは、その皿を、慎重に、流れから取り上げた。

皿の上には、新鮮な魚介を軽く握った米の上に乗せたと思われるものが2つ、美しく置かれていた。

「これは……古文書にある「すし」では……」

異次元から来たのだろうか。それとも奇跡が起こったのか。日の差さぬ大地で「すし」はさほど美味そうには見えなかったが、それでも圧倒的な生の輝きでわたしたちを照らしていた。規則正しく、まるで最初からそこに置かれるべき運命だったのだとでも言うように、すしはただ美しくそこにあった。

わたしは、得体のしれぬ衝動に突き動かされて少年を見た。少年もわたしを見ていた。少年は、幼い頃のわたしだった。


小さい頃、わたしの父はジードの略奪部隊にいた。わたしはわずか6歳で実戦に投入されたわたしは、種もみをもったジジイをボウガンでぶちころして種もみを奪った功績により、「デッド寿司」なる絵本をジード様じきじきにいただいたのだ。わたしは体中から体液をこぼしながら朝から晩までそれを貪り読んだ。

以来、すしはわたしの夢となった。
生きる意味となった。

その、すしが、いま、目の前に輝いている。
あの頃のわたしと、今のわたしが並び立つその前で。

「……食べよう」

少年は微笑み、頷いた。
おそるおそる手を伸ばす。オレンジ色の魚肉に指先が触れる。湿った感触の中にある確かな生命の力強さ。背中を押されるようにして、わたしは万感の思いを込めて、それを口の中に押し込んだ。


こんなものがすしであ(検閲)



あたくしがその日食べたのは、これだけの設定をもってしてもうんこにすら遠く届かないゴミのようなすしであった。店員はばかでかい声で私語にいそしみ、ネタはほとんどが在庫切れ。ラードとコンドームの皮で作られたような肥満の男が「ほとんどなにもありませんが、なにか食べたいものがあったらイチかバチか言ってみてくださいねーw」などと抜かし、健気にも赤貝を注文したおじいさんには茶髪のチャラい店員に「残念でしたー!品切れ!」などと笑顔でいわれてしまう。ミスミのじいさんだってここまでの目にはあっていないじゃないか!ひどすぎる……

「あの…中トロは」

「あるよォー!お客さん、鋭い!」

最後の希望だった中トロは冷やし中華のきゅうりより細かった。
帰ろうとしたら15分も前に注文したあおさ汁がやってきた。かつて江ノ島が一番汚かった時代の海を正確に再現していた。

負けた……完敗や……∬-_ -)

あたくしは、おのれを労うというしごく簡単なことに、完膚なきまでに失敗したのだ。

以来、あたくしの夕食はずっとすしである。
傷を癒すように、かたきを討つように、安心して食えるすしだけを、くっている。

(完)


恋、してるかい?



恋どころではない。

まもなくしぬ。


+ありこ+

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